天王洲郵船ビル歯科クリニック 
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歯周病と糖尿病の意外な関係

日本人成人の約8割に何らかの歯周病の症状があり、糖尿病の可能性がある人は、50代以上で3〜4人に1人。最近の調査で、歯周病と糖尿病は深く関わりお互いを悪化させる原因になることがわかってきました。
日本歯科大学教授で歯周病学を研究される鴨井久一先生と、日本子ども家庭総合研究所の堤ちはる先生に各専門分野から歯周病と糖尿病の関係を伺いました。

歯周病が原因となって糖尿病が悪くなる!?

 歯周病と全身の病気との関係が研究されていますが、最近、明らかになってきたのが糖尿病との関係です。
 歯周病とは、歯と歯ぐきの間に食べかすがたまって細菌が増殖し、炎症を起こした状態。歯ぐきや歯を支える歯槽骨の組織に侵入して、放っておくと歯を失ってしまうこわい病気です。
 鴨井先生が指摘されるのは、歯周病の影響が口の中だけにはとどまらない危険性。長期にわたって歯ぐきに炎症があると細菌が歯肉の血管に入り、全身に運ばれてしまいます。歯周病菌を持った血液が肝臓に入るとブドウ糖の代謝を妨げ、インスリン(体内の血糖値を下げるホルモン)の働きを弱めることに。また歯ぐきの炎症を抑えるため免疫細胞から出るサイトカインという物質もインスリンヘの抵抗を高め、結果的に糖尿病を悪化させます。
 糖尿病はすい臓のインスリンの働きが低下して起こる生活習慣病。慢性的な高血糖によつて目や腎臓、自律神経、心臓、脳血管などにダメージを与えますが、近年は歯周病の原因になることが注目されるようになりました。
 糖尿病になると口が乾き、唾液中のブドウ糖濃度が上がり歯垢がつきやすくなります。また歯ぐきの血管に酸素や栄養が行き渡らず、免疫力が低下。歯ぐきをつくるコラーゲン繊維の合成も阻害され、まさに歯周病菌が増殖しやすい環境が整ってしまうのです。

自己管理をしっかりして歯周病と糖尿病を好循環に

 こうして歯周病と糖尿病は、一方が悪化すればもう一方の症状も悪化するという悪循環に陥ります。しかし、視点を変えれば、「一方を治療すれば一方も改善される関係とも言える」と鴨井先生はおっしやいます。
 定期的に歯垢をとるケアを続けて糖尿病がよくなったり、血糖値をコントロールする食生活を心がけることで歯周病の進行を抑えられた症例が数多くあるそうです。
「根本的な原因は違うものの、歯周病と糖尿病は痛みが少なく気づいたときは手遅れになりがちな点で似ています。だからこそ歯周病も糖尿病も、お医者さんにまかせっきりにしないでほしい」。
 歯周病、糖尿病の治療の柱となるのは自己管理。歯周病は口の中をきれいに保つこと、糖尿病は食事療法などで血糖値を管理することが求められます。
「どちらも医者の役割はその方法を一緒に考え、サポートすることしかない。患者さんが受け身ではなく、自分自身の問題として治療や予防とつきあっていく前向きな姿勢が大事。姿勢次第で一生が変わります」。

何をどう食べるか? 食生活でできる予防

 堤先生いわく、「糖尿病の食事管理は歯周病にも効果があります」。自分でできる予防策として食事管理の影響は大きく、「糖尿病でない方もぜひ知っておいてほしい」と堤先生は提案されています。
 覚えておきたいのが食事には二つの視点があること。一つは食品側からの視点で、食品交換表でわかるエネルギー(カロリー)と栄養素に注目したもの。もう一つは人間側からの視点で、食べたものが身体に吸収された後の血糖値の変化に注目したものです。
 食物が身体に入ると血糖値は上がり、インスリンの作用を受けて時間とともに下がっていきます。血糖値を良好な状態に維持するというのは、血糖値の上昇をできるだけ小さく、なだらかに抑えること。「血糖値の激しい変動は糖尿病はもちろん、歯周病にもよくありません。インスリンはすい臓から分泌されるので、すい臓に負担をかけない、身体にやさしい食事とそのとり方が糖尿病にも歯周病にも望まれます」。
 毎日の食事で、食べ合わせや食べ方など少し気をつけるだけで効果があるとのこと。例えば、ご飯には、酢の物や納豆、みそ汁などの組み合わせが、血糖値の上昇を小さく、なだらかに抑える効果があるそうです。食べ方の注意では、かむ回数を増やすこと。よくかんでゆっくり食べることで、血糖値の上昇が満腹中枢に伝わり、糖尿病の原因になる食べ過ぎや肥満も防ぎます。


かめばかむほど効果がある。
歯のケアもしっかりと!


 さらに重要なのが、かめばかむほど分泌される唾液の力。食物とよく混ざることで消化を助ける上、歯周病の予防にも効果的です。唾液には細菌を洗い流す効果や炎症を抑える働きがあり、口の中を健康に保つだけでなく全身の免疫力を高めてくれます。
 かむ回数を増やすためには、「できるだけひき肉を使わない」「果物は皮つきで食べる」「食物繊維の豊富な食品を食べる」といった工夫も有効です。
 食事管理というと専門家の指導が必要な難しいことのようですが、「深刻な症状でない限り、むやみに節制する必要はありません」と堤先生。
 自分ができる範囲で食べるものを選び、食べ方に気をつけることが糖尿病や歯周病を予防する第一歩です。
「なぜそうするのか?と目的を自分で理解して、無理のない自己管理を。すでに糖尿病や歯周病の方は、主治医や管理栄養士からだけの指導に頼りすぎず、可能な方法を相談するプロセスを大事にしてほしい」ということです。
 さらに歯のケアがめざすのは、むし歯予防だけではないのです。「大きな病気にならないため」という目標を持って、毎日の歯みがきをポジティブな習慣に変えていきましょう。

鴫井 久一(かもい きゅういち)
1963年日本歯科大学卒業。1967年日本歯科大学大学院修了。現在、日本歯科大学歯学部教授、日本歯周病学会理事長を務める。歯周病がもたらす全身疾患への影響を研究、関連著作も数多い。

堤 ちはる(つつみ ちはる)
1979年日本女子大学家政学部食物学科卒業、1981年同大学大学院修士課程修了。1983年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、1986年同大学大学院博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。1989〜1990年米図コロンビア大学医学部留学。現在、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長。


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